ペレットストーブ火災・事故の危険について

近年、暖房器具の1つとしてペレットストーブを選ぶ方が増えてきました。薪ストーブよりも安価で手軽に設置できるものが多い中、安全性についてはどうなのでしょうか?ペレットストーブもその他の暖房器具と同様、火災や事故を起こさないよう正しく使用することが大切です。

日本国内でも、残念ながらペレットストーブが原因の火事も時折起こっています。

では、ペレットストーブを安全に使うにはどうしたらいいのか、そしてどんなときに火災が起こってしまうのか解説していきたいと思います。

ペレットストーブは本来火災のリスクは低い!?

薪ストーブやペレットストーブは本来火災のリスクの少ない暖房器具です。理由は3つあります。

・ストーブの中で熱をうまく滞留させて排出するから
・煙突とストーブ内部の気圧差によってバックドラフトが起こらないようになっているから
・ストーブ本体の気密性能が高く燃焼中の気圧の変化が起こりにくい

ですがこれは薪ストーブの場合です。ペレットストーブの場合には、煙突がなくモーターで排気している場合もありますね。

どちらにせよ、ストーブ本体から熱がもれたり過剰に吸気されたりせず、正常に排気が行われているのなら、火事のリスクはとても低いのです。

ペレットストーブで火災が起こる原因3つ

ペレットストーブを使っていて事故や火災が起こってしまう場合には3つの原因が考えられます。

①排気がうまくいかない②施工や使い方に問題がある③掃除やメンテナンスがしっかりできていない

①排気がうまくいかないと熱や炎がタンクに引火する

ストーブの中で燃えている炎や熱が燃料タンクに逆流すると、ペレットに引火して火災が起こります。

熱の逆流が起こるのは、ストーブの排気がうまく行かないからです。理由はいくつか考えられます。

・排気のためのモーターが止まってしまった
・消化の手順が間違っている

電気を使ってモーターを動かしている場合、停電や災害が起こると排気がうまくいかなくなる場合があります。

ですが、国内で流通しているペレットストーブの機種の中には、地震の揺れを感知して燃料の供給を止める「感震自動消火装置」が設置されています。

※当社で取り扱いのあるウォームアーツのペレットストーブは感震自動消火装置が設置されています。

万が一の時もすぐに火が止まるので、こうした製品を探してみるのがお勧めです。

感震自動消火装置について

停電した時の対応
電気で作動するペレットストーブには、燃料の追加もモーターを駆動して行っているものがあります。

停電時には排気ファンが止まってしまい、同時に燃料の供給も止まります。そのため、今火がついている分のペレットが燃え尽きれば火災は起こりません。

無理に火を消そうとするのではなく、そのままにしておくようにしてください。

②施工や使い方を間違う

ペレットストーブを設置した場所に燃えやすいものを置いておいたり、煙突の取り付け方を間違ったりすると火災の原因になります。

また、燃焼が終わっても完全に灰が燃え切っていない状態でドアを開けてしまうと、バックドラフトを起こしてしまうことがあり危険です。

中には、まだ灰が暖かい状態で掃除機を使ってしまい、掃除機内部から発火したというケースもあるようです。

ペレットストーブの火災の事例

ペレットストーブには、火が消えてから最低何時間経ってからでないとドアを開けてはいけない、というような規定が機種ごとにあります。

そうした使い方を間違えなければ、火災を防ぎ安全に使用することは可能です。

ちなみに、煙突の取り付けなど施工の方法が間違っている理由は、2023年現在の日本にペレットストーブの設置や製品の基準が存在していないことが挙げられます。

③掃除とメンテナンスがきちんとできていない

ペレットストーブには、一回使うごとに行う掃除、1週間~1か月置きの点検、年一回の業者に依頼する点検など必要なケアがあります。

この作業を怠っていたり間違った点検の仕方をしていたりすると、火事や事故の原因になります。

例えば、ドアガラスに煤がこびりついて黒くなっていないか、ドアにつけるガスケットという部品が古くなって気密性が悪くなっていないかなど、毎日火をつける前にチェックしなくてはいけません。

さらに、排気ファンにタールがこびりついていたり、煙突の中に煤が溜まっていたりしても、火災の原因になります。これらの点検はしろうとでは難しいため、業者の方にお願いしましょう。

一シーズンごとに一回の点検で充分です。

ペレットストーブのメンテナンスについて

ペレットストーブの設置基準がない理由
2023年現在、日本には欧米諸国のような薪ストーブとペレットストーブの設置や性能についての基準がありません。

たとえばアメリカには、EPA排煙基準というものがあります。排気ガスの中の煤やタールの量を厳密に規定するもので、クリアしないと商品としての信用が得られないほど厳しいものです。

薪ストーブの排煙基準について

ですが、日本には施工や使用についてのこうした決まりが明確化されていません。

もっとも大きな理由は、木質バイオマス燃料をつかった暖房への知識が圧倒的に少ないことでしょう。

アメリカやヨーロッパのような乾燥した地域とは違い、湿潤な環境で古くから木材に恵まれた日本は木で家を作るのが一般的です。そのため、古来から火の扱いを間違えることで重大な火災が起こるということがたびたび起こっていました。

日本人には、火に対し強い恐怖感を持つ民族性があるといえます。

特に戦中戦後からの電気・ガスの普及したことも、日本人の薪ストーブ離れを加速させました。

対して、政府主導で木質バイオマス燃料の導入だけが進められているのです。脱炭素社会へのシフトが急務であること、世界的に化石燃料への依存を止めようとする風潮が強いことが影響しています。

環境庁 木質バイオマス燃料のパンフレット

製品だけが広まりつつある中で、正しい知識が普及していないことが事故の起こる原因だといえます。

まとめ・正しい使い方をすればペレットストーブの事故は防げる

ペレットストーブの事故のリスクについて見てきました。薪ストーブと同様に、正しい施工や使い方、掃除とプロのメンテナンスを行えば火事が起こるリスクはほとんどないものです。

しかし、掃除のやり方が間違っている、煙突の付け方や掃除の仕方が間違っているなどのヒューマンエラーで事故は起きてしまいます。

どんな道具にも言えることですが、必ず正しい使い方をして専門家の意見に頼らなくてはいけません。

信頼できる業者さんからの購入、施工の説明を受けるように心がけてください。

特にペレットストーブの場合、火が消えてから放置しておくべき時間を必ず守って、火災や延焼のリスクを避けましょう。