木質バイオマスの利用について|環境問題、エネルギー問題解決の一端として期待

カーボンニュートラル画像

木材を使った木質バイオマス燃料の生産は、温暖化やエネルギー問題を解決できるのではと期待されています。それは、日本は森林が多いので自給自足が可能ですし、植物は二酸化炭素を吸収して炭素を作ってくれるからです。

木を燃やしたら二酸化炭素が出るのでは? どのみち温室効果ガスが増えてしまうのでは? と疑問に感じるかもしれませんね。そこで、カーボンニュートラルという考え方と合わせて木質バイオマスの利用の可能性について解説していきましょう。

木質バイオマスとは

木質バイオマスとは、木材を利用して作り出すエネルギー源です。様々な原料から生産されたエネルギーの元を総称してバイオマス燃料と言います。

樹木などの植物は、成長の過程で二酸化炭素を体に取り込み固形物として蓄積していきます。原理としては化石燃料に近いものといえますね。木質バイオマスは、この炭素をエネルギーとして利用する取り組みなのです。

バイオマス燃料の材料として、とうもろこしなどの食用植物が使われることもあります。木質バイオマスは、間伐材や流木、ダム流木など廃棄される木材を使うので、食糧問題などが起きません。

効率よくエネルギーを生産、利用することができるので、様々な分野への活用が試みられています。

木質バイオマスとカーボンニュートラル

「カーボンニュートラル」とは、排出される二酸化炭素と、吸収される二酸化炭素の量が同じになる、という理論です。
簡単に流れを説明すると、以下のようになります。

1.植物は二酸化炭素を吸収して炭素として蓄える。

2.人がそれを燃やしてエネルギーにする。

3.そこで二酸化炭素が発生する。

4.発生するのはもともと植物が吸収した二酸化炭素

5.そのため、燃料を燃やす前とあとの二酸化炭素の量は変わらない

つまり、植物が一旦消費して二酸化炭素の量が減っているので、木質バイオマスを燃やしたとしても空気中の二酸化炭素が増えるわけでない、ということなのですね。

だからこそカーボンニュートラルの考え方は、温暖化に対する対策の一つとして注目されています。

参考:かずさDNA研究所

木質バイオマスについて

木質バイオマス燃料の製造方法と課題

木質バイオマス燃料には、個体、液体、気体の3つの形状があります。液体として製造されるのはバイオエタノールやエコ軽油、気体として製造されるのがバイオガスです。

薪やペレットはその中で、固体燃料に分類されます。固体燃料は、貯蓄や補給が最も簡単なので、家庭のストーブなどに幅広く利用できて、身近なバイオマス燃料と言えます。

参考:かずさDNA研究所

木材は、「ミクロフィブリル」という非常に強い組織を持っています。これはセルロースの分子が複数集まってできたものです。セルロースは植物の細胞を作っている材料の一つですね。

ミクロフィブリルによって支えられているので、木材は強くしなやかになり、災害などにも耐えることができるというわけです。

しかし、この強い組織はバイオ燃料に加工する際には少し問題になります。植物の細胞組織があまりにも強く固定されているので、発酵させて糖にするためのタンパク質酵素が浸透できないのです。

そこで、ミクロフィブリルを1ナノメートル以下まで粉砕し、酵素が入り込める隙間を作る技術が開発されました。これによって効率よくバイオエタノールが生産できるようになっています。

製造の課題はコスト

ペレットやバイオエタノールなどのバイオマス燃料を安定供給するための課題は、生産コストです。低コストで作り出せなくては、日常的に使うのは難しいからです。

2021年現在の欧米では、森林整備や製材や木材加工の際に出る木くずなどを使って低コスト化を図っています。

日本は紙を作るときに出る廃棄物や、その他の産業廃棄物を転用する方法が主流であり森林から直接材料を得る生産方法はまだまだ実験段階です。そのため、国内ではまだバイオマス燃料が日常に浸透できていません。

今後低コストでの生産を実現するために、林業や製材業の副産物の利用を徹底すること、輸送の経路を簡略化して運搬コストを下げることなどが目指されています。

木質バイオマス利用で里山保全が可能になる

ペレットなどの木質バイオマス燃料を作ることは、里山の回復にも繋がります。木は自然に生やしておくと際限なく繁殖するものです。そのため生えすぎた木が呼吸のための光や空気を遮ってしまい、結果として枯れて腐ってしまいます。

カーボンニュートラル

このような荒れた山々が今問題になっているのです。かつては林業が盛んだったり、生活に必要なものを山から調達する文化がありました。今では外国産の安い木材が大量に輸入されているので、国産の木材を時間を掛けて育てようとする人が減っています。生活スタイルも変化して、山を利用する機会がどんどん減っていってしまいました。

山が健康でないと、土砂崩れや海洋ゴミの増加など様々な問題が起こります。そのため、定期的に人の手を入れて、空気や光の道を作り保全してやらなくては行けません。

木質バイオマス生産は、こうした荒れた山々の木を適切に切り出して利用することで、生えるべき木だけを残して環境を改善に繋がります。産業化すれば雇用促進や地域活性など、様々な可能性を秘めているのです。

まとめ

〜木質バイオマス利用で改善できる日本の課題とは〜

木質バイオマス燃料として木を利用することは、エネルギー問題や環境問題など日本が抱えている課題解決の一端になります。

二酸化炭素の総排出量を増やさないこと、きれいな山を維持することが可能になるからです。ですがコストの問題からまだまだ実験段階なのが現状。

今後は、林業で出る廃棄物や不要な木材を効率良くエネルギーに転換することが目指されます。それはエネルギーの地産地消で解決可能です。近隣の山に地域の人が入って、自分たちで使う燃料を自分たちで作る時代が来るかもしれません。